3DGSUE5VFXワークフロー 2026-07-24

UE5 × XGRIDs SDKで
3DGSから素材を出力する

ロケハン3Dの中村です。3DGSスキャンを映像制作の「素材」として使うなら、ゲームエンジンに持ち込むのがいちばん自由が利きます。この記事では、私が渋谷スクランブル交差点のスキャンで実際に使っているXGRIDs SDK(LCC Plugin for UE)の導入から、仮想カメラでの素材出力、AIによるライティング変更まで、UE5連携のワークフロー全体をまとめます。あわせて、3DGSを扱う主要ソフトとUE5向け他プラグインの比較も載せておきます。

UE5のビューポートに読み込んだ渋谷スクランブル交差点の3DGSスキャン(地上アングル・昼)
UE5に読み込んだ渋谷スクランブル交差点の3DGS。LCC Plugin for UEでLCC2形式のスキャンをインポートすることで、ビューポート内をそのまま歩き回りながら画角を探せます。
3DGSスキャン(渋谷) LCC Plugin for UEでインポート 仮想カメラで画角を確定 スチル/動画として出力 AIでリライト

01 なぜ3DGSをUE5に持ち込むのか

私はロケハン3Dで、都市部を中心にした3DGSスキャンデータを制作・販売しています。3DGSはビューアーで眺めるだけでも十分に使えますが、映像制作の素材として本気で使うなら、UE5に取り込むことで一段階上の自由度が手に入ります。具体的には、次のことができるようになります。

渋谷の3DGSスキャンの路上にCGのスポーツカーを合成した例
スキャンにCGアセットを合成した例。渋谷の3DGSスキャンの路上に、CGのカーモデルを配置しています。実写ベースのスキャンを土台にすることで、遠近・スケール・ライティングの整合が取りやすく、VFX合成の当たりを素早く作れます。
画像制作:シニアVFXアーティスト hectorVFX 氏(ロケハン3Dの渋谷データを使用)

なお、出力した素材を空撮プレートとして仕上げる工程は別の解説記事で扱う予定なので、この記事は「UE5との連携」と「素材出力」の部分に絞って書きます。使うプラグインはXGRIDsのLCC Plugin for UE(無料)です。

02 XGRIDs「LCC Plugin for UE」とは(ダウンロード先)

LCC Plugin for UEは、XGRIDsが公式配布しているUE5向けの3DGSプラグインです。3DGSシーンの読み込み・描画・編集・リライトまでを1つのプラグインで担います。私がこれを使っている理由は主に2つで、都市規模のスキャンを一括で扱えるスケール(ストリーミングLoDで数十億点規模まで対応)と、LCC2という圧縮フォーマットの存在です。渋谷のような大規模シーンでも、PLYで持ち回すよりファイルが大幅に軽く、読み込みが安定します。

対応エンジン
Unreal Engine 5.1〜5.8(Windows / Linux、DirectX 11・12 / Vulkan)
対応フォーマット
LCC2 / LCC / PLY / SOG / SPZ。PostshotやLuma、Polycamなどが書き出す標準的な3DGS PLYもそのまま読めます
スケール
点数無制限。ストリーミングLoDにより大規模シーンでもフレームレートを維持
料金
Free+Pro の2ティア。Proは現在期間限定で無料(プロキシメッシュ・リライト、セルフシャドウ、ACES/OCIOカラーパイプラインなどが追加)
使い方
Blueprintベースでコード不要。C++ APIでのランタイム制御にも対応
Download / XGRIDs 公式

LCC Plugin for UE(プラグイン本体・サンプルデータ)

プラグイン本体は、XGRIDsの開発者ポータルからUEバージョン別のzipとして入手できます。サンプルデータも同じページにあります。

https://developer.xgrids.com/#/download?page=LCC_UNREAL_SDK_UE54

ダウンロードページを開く →

03 インストール手順

導入はUE5の標準的なプラグイン追加の流れそのままです。私はUE5.5のプロジェクトに LCC4Unreal-v3.0.0-win-UE5_5 を入れています。

  1. 上のダウンロードページから、使っているUEバージョンに合ったzipを入手します。バージョン違いはロードエラーの元になるので、ここだけは正確に合わせます。
  2. zipを解凍し、プロジェクト直下の Plugins フォルダに配置します(フォルダがなければ作成します)。全プロジェクトで共通利用したい場合は、エンジン側の Engine/Plugins に置くこともできます。
  3. プロジェクトを起動し、編集 → プラグイン で「LCC」を検索して有効化します。エディタの再起動を求められるので、そのまま再起動します。
  4. 再起動後、プラグインのファイル選択ダイアログから .lcc / .lcc2 / .ply を読み込むことで、3DGSシーンがレベルに配置されます。
メニューの正確な位置についてプラグインのUIやメニュー配置はバージョンアップで変わることがあります。最新の正確な手順は、XGRIDs公式のチュートリアル開発者ドキュメントが一次情報です。導入でつまずいたら、まずここを確認してください。

04 3DGSを読み込み、仮想カメラで素材を出力する

読み込みが終われば、あとはUE5の標準操作です。パースペクティブビューでカメラを動かし、狙った画角を作ります。渋谷スクランブル交差点の場合、駅直上からの真俯瞰はドローン飛行禁止区域のため現実には撮影できませんが、スキャンデータの中では制約がありません。地上を歩いて集めた実スキャンを土台に、カメラだけを物理法則から解放するのがこのワークフローの核です。

UE5の仮想カメラで作った渋谷スクランブル交差点の真俯瞰アングル(昼)
仮想カメラで作った真俯瞰アングル。カメラを駅直上に移動することで、実際にはドローンを飛ばせない場所からの画角を作れます。交差点のペイントや横断歩道のディテールまで実スキャン由来です。

画角が決まったら、素材として書き出します。スチルなら高解像度スクリーンショット(HighResShot)で解像度を指定して出力することで、そのまま合成・レタッチに回せる静止画になります。動画素材が必要な場合は、シーケンサーでカメラアニメーションを組むことで、カメラワーク付きのショットとしてレンダリングできます。

ポイント土台になっているのはあくまで実際にスキャンした3DGSデータです。背景をゼロからAIに生成させるのではなく、実写ベースの点群の上に「物理的にありえないカメラワーク」だけを足す。構図・建物の配置・スケール感の正確性は、この時点ですべて確定します。

05 AIでライティング・季節を変える

UE5から出力したスチルを画像生成AIに渡し、「夜にして」「雪を降らせて」といった短いプロンプトだけでライティングと季節を差し替えます。構図・カメラアングル・建物の配置はUE5側(=実スキャン)で確定済みなので、AIに任せるのは光と空気感の作り込みだけで済みます。指示が短いほど構図が保たれやすく、この役割分担がいちばん破綻が少ないです。

地上アングル左が変換元。同じ構図のまま、時間帯と季節だけを差し替えます。
変換元 変換元。UE5の3DGSシーンから出力した渋谷スクランブル交差点の地上アングル(昼)
UE5から出力した素材(昼)。実スキャンそのままの構図。
AI「夜にして」 AIで「夜にして」と指示して生成した渋谷スクランブル交差点の夜景
夜景。窓明かり・看板の発光・路面の反射をAIが補完します。構図は変換元と一致。
AI「雪の夜にして」 AIで「雪の夜にして」と指示して生成した渋谷スクランブル交差点の雪景色
雪の夜。路面・街路樹・空だけが差し替わります。
真俯瞰アングル同じ手順が別の画角にもそのまま使えます。変換元は 04 で作った真俯瞰カットです。
変換元 変換元。UE5の仮想カメラで作った渋谷スクランブル交差点の真俯瞰アングル(昼)
仮想カメラで作った真俯瞰(昼)。ドローンを飛ばせない場所の画角。
AI「夕方にして」 AIで夕方の光に変更した渋谷スクランブル交差点の真俯瞰アングル
マジックアワー。空撮風のカットになります。
AI「夜にして」 AIで夜に変更した渋谷スクランブル交差点の真俯瞰アングル
夜。1つの画角を確定させておくことで、時間帯違いを短時間で並べて比較できます。

06 現状の限界:看板・文字・人工物は崩れる

条件付きの手法であることも正直に書いておきます。看板の文字や、電車・標識のような細かい人工物は、現状のAI補完では崩れます。存在しないはずの構造物が現れる「ゴースト」や、本来ない場所に電車状の構造が生成される破綻が起きます。

AIによるデータ補完で発生した破綻箇所(存在しない構造物のゴースト、不自然な電車の生成、看板の文字崩れなど)に赤・黄・青の丸と注釈を付けた画像
破綻箇所の例。黄色の丸=存在しないはずの構造物(GHOST)。青の線=本来ないはずの場所に生成された電車状の構造(TRAIN)。赤の丸=看板・標識の文字が崩れている箇所。

私はここを「プロの仕事の領域」だと考えています。崩れやすい箇所はあらかじめ再撮影・手直し前提で設計することで、世に出せるクオリティまで持っていけます。AI補完の精度そのものは、今後の向上に期待です。

使いどころの判断基準この手法は万能ではありません。看板・文字・人工物が写り込まない画角や、多少の破綻が許容されるカットに向いています。看板の文字まで正確に見せたいカットには、現状は不向きです。

07 3DGSを扱える既存3DCGソフト比較

ゲームエンジンだけでなく、普段のVFXパイプラインで使っている3DCGソフト側でも、3DGSはそのまま扱えるようになってきています。「どこまでをDCCでやり、どこからをUE5でやるか」を決めるうえで、主要ソフトの対応状況を整理しておきます。

ソフト3DGS対応得意不得意
Houdini 22ネイティブ対応スプラットを通常のジオメトリ(点群)と同様に扱え、Bone Deform等の標準ノードでそのまま変形・アニメーションできる。Karmaでの直接レンダリングやCopernicus上でのリライトまで対応し、プロシージャルな加工の自由度は最強クラスライセンス費用と習得コストが高い。「まず表示したい」だけなら過剰装備
Blenderアドオン経由KIRI Engine製「3DGS Render」などの無料アドオンで読み込み・編集・レンダリングまで無料で始められるアドオン依存で機能・品質にばらつきがある。大規模スプラットでは動作が重い
3ds MaxV-Ray 7で対応V-Ray 7がGaussian Splatの直接レンダリングに対応。既存のV-Ray中心のパイプライン(建築ビジュアライズ等)に自然に組み込めるV-Rayライセンス前提。スプラットの編集機能は限定的
Cinema 4Dレンダラー経由Octaneなどサードパーティレンダラーの3DGS対応を使ってレンダリングできる。カメラワークづくり・モーショングラフィックスとの相性が良いC4D標準機能ではなくレンダラー依存。対応状況はレンダラーのバージョン次第

私の使い分けは、都市規模のシーンを丸ごと歩き回って画角を探すのはUE5、カット単位の絵作り・レンダリングはDCC側です。実際、空撮カットの制作ではC4D→Octaneのフローを使っていて、その手順は3DGSから「空撮カット」を生成する方法で詳しく解説しています。Houdiniでのスプラット加工については、hectorVFX氏が渋谷データで実証したHoudini 22 × ComfyUI ハイブリッドワークフローの記事で詳しく紹介しています。

08 UE5でリライトまでできる3DGSプラグイン

UE5に3DGSを「表示するだけ」のプラグインなら、無料・OSSを含めて数多くあります(XScene-UEPlugin、MLSLabs GS Renderer、NanoGSなど)。ただ、この記事のように素材出力まで考えると、実務の分かれ目は「読み込んだスプラットのライティングを変えられるか」です。そこで、リライトに対応しているものに絞って紹介します。

プラグイン料金リライト得意注意点
LCC Plugin for UE
(XGRIDs・本記事で使用)
無料+Pro基本リライト=無料版。プロキシメッシュ・リライト+セルフシャドウ=Pro数十億点規模のストリーミングLoDとLCC2圧縮で、都市丸ごとの巨大シーンに最も強い。PLY/SOG/SPZも読めるProは現在期間限定無料。将来の料金体系は要確認
Volinga Plugin無料版+Pro無料版=シーンライトと干渉するadditiveライティング。Pro=プロキシメッシュ・リライト(ジオメトリ・影・マテリアルを再現)バーチャルプロダクションの本線向け。マルチGPU+nDisplay、ACES/HDR、disguise連携。PLYと独自NVOL形式を読めるPro機能は有料。LEDウォール等のVP用途に最適化された設計
Luma AI UE Plugin無料アナリティカルライト・サンライトでのリライトに対応Lumaで撮ったデータをそのままUEへ。クロップ・カリング・マージまで無料で完結リライトは直接光のみでエミッシブ非対応。対応エンジンはUE5.1〜5.3

3つに共通する注意点として、スプラットの描画はUnrealのコアレンダラーの隣に置かれた独自パイプラインで行われるため、スプラットはLumenのグローバルイルミネーションには参加しません。リライトはどのプラグインでも「プロキシメッシュ(スプラットに沿わせた簡易ジオメトリ)」を介して影や光の当たりを再現する方式が主流です。そのうえで私がXGRIDs SDKを軸にしている理由は、リライト対応と都市1エリアを丸ごと1シーンとして扱えるLCC2の設計が両立しているからです。

09 まとめ

この記事の流れをまとめると、3DGSスキャンをLCC Plugin for UEでUE5に取り込み、仮想カメラで画角を確定し、スチル・動画として出力し、AIで光と季節だけを差し替える、という一本道です。いちばんのポイントは、すべてをAIに生成させず、必ず実スキャンのCGを経由させること。構図と正確性はスキャンデータと仮想カメラで担保し、AIには仕上げだけを任せる。この役割分担があるからこそ、破綻を抑えながら「撮れない画」を実用レベルで出せます。

UE5連携やVFX素材としての3DGS活用に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

DATA / 3DGS

この記事で使っている渋谷スクランブル交差点の3DGSデータは、
ロケハン3Dのオンライン版で購入・閲覧できます

PLY/OBJ形式(3DGSウォークスルー付き)で提供。スタンダードライセンス ¥200,000〜(商用・非商用利用可)。同じデータでUE5×AIのワークフローを試してみたい方は、ぜひご覧ください。

物件データを見る →
Credits / 制作

制作クレジット

中村 航
中村 航Kou Nakamura
ロケハン3D 代表 / 検証・執筆

ロケハン3D(LOCAHUN 3D)代表。3DGSスキャンとゲームエンジン・AIを組み合わせた撮影ワークフローを研究・検証している。

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hectorVFX
hectorVFX
Senior VFX Artist / 合成例の図版提供

ハンガリー・ブダペスト拠点のシニアVFXアーティスト。本記事のCGカー合成例は、ロケハン3Dの渋谷データを使ったhectorVFX氏の制作画像です。Houdini 22×ComfyUIによるワークフローは解説記事で詳しく紹介しています。